カイロジャーナル第70号掲載記事

カイロジャーナル第70号(2011年2月25日発行)より

AO主催 米国で人体解剖セミナー
井上裕之DCがレポート

 アトラス・オーソゴナル(AO)専門のオフィス「上部頚椎研究室」を東京・三鷹で開業する井上裕之氏が、昨年11月20、21日に米サウスキャロライナ州シャーマン大学で行われたAO主催の解剖セミナーに参加した。これまでAOの創始者Drロイ・スウェットの誘いを受け、毎年渡米しセミナーを受けていた井上氏だが、数年前に卒業以来久しぶりに同主催の解剖セミナーを受け、大いに刺激を受け、その必要性を痛感しての連続参加である。そのもようをレポートしてもらったので、これを紹介する。

奇跡はどのように起こるのか

 「私たちはアトラスの奇跡がどのようにして起こるのかを知る必要がある!」と、AOの創始者であるDrスウェットの挨拶から2日間にわたる頚椎/腰椎解剖セミナーは始まった。
 私の母校であるアイオワ州パーマー大学をはじめ、全米すべてのカイロプラクティック大学の1年目は、かなり多くの時間を人体解剖のクラスに費やす。レクチャークラスでは構造を学び、実習では人体を前にその精密さをしっかり学ぶ。それらを理解し試験にパスして、はじめて2年目からの「触診」のクラスを受講することが許される。
 実習ではオープン・ラボといって、授業時間外に解剖室で自主学習ができるのであるが、1年生の慣れない頃は深夜の解剖室からの帰路が怖かったり、食欲をなくし体重を減らしたりした。そんな思い出から卒業以来、人体解剖から遠ざかり、毎年渡米し受講しているセミナーのほとんどは研究発表や臨床発表ばかりだった。しかし、上部頚椎を主軸に臨床を始め十数年が経過し、数々の「奇跡」と言われるものを自らの臨床で体験する中で、やはり「奇跡はどのようにして起こるのか」が気になるようになった。そしてこの数年は渡米のたびに解剖実習を受講している。

経験10~20年のDC12人

 解剖実習セミナーの特徴はまず少人数制にあると言えるだろう。多くのセミナーは数十名または数百名で行われるが、解剖実習では多くても30名、可能であれば10名程度が理想とされている。人体を前に講義を行うわけだから、少人数でないと参加者全員が必要な部位を見ることができず、繰り返しの説明が必要になってしまうからである。では、今回はどのようなものだったか、と言うと、参加者は全米各地、またカナダのケベック州やワシントン州から集まり、年齢もまちまちで1950年代に卒業された大先輩から現役学生まで、主に臨床経験10年から20年のDC総勢12名で行われた。

少人数で行われた解剖風景

精密な構造学んだ2日間

 セミナーは、Drスウェットとシャーマン大学のDrチャールズ・ケニアの2人の講師によって、交互に講義する形式で進められ、臨床経験上の疑問や質問に参加者同士が意見を交わす場面もあり、私にとってはとても有意義で楽しい時間となった。具体的には、まずスライド等で各部位構造のレクチャーを行い、引き続き解剖室に移動してその部位の実習が行われると言う構成で、教室と解剖室の往復を繰り返した。主な身体部位は、浅背筋、後頭下三角、C1C2神経後根、椎骨動脈/脳底動脈、皮神経、腕神経叢、腰神経叢で、その後、Drケニアによる脳脊髄液についての講義があり、最後にDrスウェットから顎関節症と特異症例の講義で2日間のセミナーは終了した。

Drスウェット(中央)をはさむDrケニア(右)と筆者

 今回のDrスウェットの話の中でとても印象的だったのは、「BJの時代から数えて、あなたたちは3代目になります。どうか、さらに上部頚椎を理解し、私たちの世代を懐かしむようになってください」という言葉だった。
 私自身も身を引き締めて精進し、さらに次世代への全身に向けて、少しでも貢献したいと実感しアメリカからの帰路に就いた。

 

2018-06-07 | Posted in 掲載記事No Comments » 

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